問題解決

「もったいない」がコストを増やすパラドックス

「もったいない」
資源の少ない日本で、昔から大切にされた言葉かもしれません。
資源を大切にする、浪費しないという観点からみると、とってもいいことですね。

「もったいない」に相当する言葉がないと聞いたことがあって、試しにGoogle翻訳にいれてみたら。
「what a waste」と出ました。確かに、何かちょっとニュアンスが異なるようにも感じますね。

さて今回は、この「もったいない」というのは、実は却ってコストがかかることもあるというお話しです。

 

昔からある設備を大切に使うことも悪いことではありません。むしろ「使い倒す」というのは、投資対効果(ROI)を高める上でも、資産効率を高める上でもいいことです。

例えば、減価償却が終わった金型や設備を使って、安い商品を作って利益を増やすという行為は、昔からやっています。(10年位前までの自動車業界が、日本で使い倒した金型を発展途上国に移転して、そこで安い車を作るという戦略を良く採っていました。今はそれすら難しくなってきたみたいですが)’

このことから、企業においては「もったいない」のは、「コスト削減」の文脈で語られることが多いのですが、そのコストという所に着目してみると、必ずしも「コスト削減」には繋がらないことの方が実は多かったりします。

 

「コスト削減」とは、文字通り「コスト」を「削減する」ことに他ならないのですが、今の設備をそのまま使い続けるだけだと、「削減」にはなりません。単なる「前と同じ」というだけです。

 

今の設備を使った上で、「工夫」や「改善」などが入って初めて「コスト削減」となるのですが、いつの間にかお金を使わないこと(=稟議や提案をしないこと)が「コスト削減」という文脈にすり替えられているケースが起きているのです。

確かに新たにお金は出ていかないので、何も問題ないようにも感じます。

しかし、外部環境が激変している中で「同じ」というのは、残念ながら無理だと思った方がいいです(他に選択肢がない、独占市場は別です。)むしろ、競争環境である限り、他社(者)が変化していきますから、相対的に「劣化、退化」していることになってしまいます。
つまり、同じというのは絶対にないのですが、何故か「何もしない=同じ」という構図で考えてしまうんですね。

これは、企業にとっても個人にとっても結構不味いことなんですよ。

例えば、大卒初任給の推移。バブル崩壊後の平成4年頃から実は殆ど変わっていません。
これは、海外と比較すると、まだ日本が高いとは言え相対的に購買力が低下していることになります。(円高になったので、それが海外とも比較してもまだ高いのです)

出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」からAIエンジニアリングが作成

このまま行くとどうなるか?考えて見ると分かるかもしれません。
ましてや、円安方向に行ったとしましょう。一気に購買力が落ちます。これでは個人も法人にとっても、全てが高いものを買わされることになり、相対的に貧乏になってしまうのです。

ちょっと話が大きくなりすぎました。話を戻しましょう。

 

仮に今の設備を使い続けて、改善や企画をするとしましょう。

その改善を行う際には、大きく2つの方向があります。

・今のままのクオリティまま、業務プロセスを簡単にする
・プロセスを改善、追加することで今のクオリティよりも上げる

やり方を変えずにクオリティが上がるコトなんてありえませんから、この2つに収斂します。

前者はコストダウンという文脈でも、理にかなっていますね。時間を減らすというのは、まさにコスト削減に直結します。

 

問題は後者です。

 

プロセスを見直して、今まで通りの負荷(時間)で良いアプトプットが出るのであれば万々歳なのですが、これはかなり難易度が高く、結果的にプロセスが追加された、複雑化されたというケースが多いのが現状です。

 

当然、プロセスを追加するには、工数(時間)が必要になります。

 

となると、取れる手は2つ。
人を追加するか、残業をして何とかする。

しかし、人を採るのが大変。採用コストもどんどん上がっていきます。新たに採用すると当然教育コストもかかってくる。
今いる陣容で何とかしようにも、残業をさせるには当然コストは上がる。しかも、ずっと残業をさせるわけにもいかない。
さらに、サービス残業をさせるわけにもいきません。(これだと単純な労働強化になってしまう)

この改善によって売上が上がればいいかもしれません。しかし、改善で売上があがるほど市場は甘くないですよね。

むしろ、現状維持が精一杯。

 

はい、これでコストアップの完成です。

 

「お金を使いたくない」「投資したくない」気持ちは分かります。
守りは大切ですが、その守りが却ってコストを増やし、どんどん自分の首を絞めていることもあるということは、頭の片隅置いておいた方がいいというお話しです。

 

 

11月から始めましたブログも15本書くことが出来ました。ここまでお読み頂きまして、心から御礼申し上げます。

今年のブログは本稿が最後です。来年は1/4から開始いたします。来年もよろしくお願いします。
みなさまどうぞよいお年をお迎えください。

ピックアップ記事

  1. AIエンジニアリングのWebサイトが公開になりました
  2. 求人ページ専用のページを追加しました
  3. スカイディスクと 水処理関連のスマートファクトリー化を促進

関連記事

  1. 問題解決

    偽装は人の問題なのではなく、そうなる構造が問題

    前回のブログで「報告偽装」について触れました。「偽装」というと…

  2. 問題解決

    アウトソーシングすらできない時代に

    人員削減をすると、要員が足りないので派遣社員やアウトソーシングという手…

  3. 問題解決

    1週間も続ければ「伝統」になる?

     私たちは「システム化」と言わずにあえて「高度化」なる言葉を使って表…

  4. 問題解決

    インフラこそ本当は戦略部門

     水、空気、電気 全て、私たちが携わっている工場だけではなく…

  5. 問題解決

    貢献意欲「だけ」に支えられる現場は危ない

    日本の工場の現場を見る時に、本当に感心するのが「貢献意欲の高さ」です。…

  6. 問題解決

    重箱の 隅をつついて ドヤ顔る そのドヤ顔に 金がかかるとも知らず(字余り)

     ある仕組みを導入すると必ず出てくるのが「滅多に出てこない事象を出し…

2019年6月
« 5月    
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

最近の記事

  1. IoT

    アナログに把握するためにはデジタルである必要がある
  2. テクノロジー

    標準化って「人の工夫」をないがしろにするんじゃない?
  3. 問題解決

    「完璧」とは実は作り手の保身だったりする
  4. 問題解決

    過去を否定するから変われない。過去は過去、今は今
  5. ワークライフ

    ノウハウを囲い込むとノウハウが溜まらないパラドックス
PAGE TOP