問題解決

「苦労」は自らするにはいいかもしれないが、他人にさせるものではない

 工場の設備であったり、様々なシステムの操作や構築を自由自在に行うためには必ず「学習」というプロセスを通って行われます。

 シンプルに言うと「使い方を学ぶ」というプロセスです。

 このプロセスは研修やマニュアル、さらにはOJTを通じて行われますが、実態は「マニュアル」と「OJT(実地訓練)」を通じて行われることが多いでしょう。

 そのマニュアルそのものも、あまりアップデートされていないことが多く、「マニュアルはこう書いてあるけどね」という枕詞をつけて話され、実際の運用との乖離が生じてしまうこともままあるでしょう。それこそが「ノウハウ」でもあったりします。

 マニュアルというのは、基本作ることは「きっかけ」でしかなく、本当に重要なのは「アップデート」なのですが、何故かアップデートはなされないことが多いのです。

 何故でしょうか?

 色々な理由があるかもしれません。

 そもそもマニュアルアップデートがなされるのは、明らかに間違いがある場合に集中する。

 マニュアルと乖離するような運用される時点で、現場関与者の中である程度プロシージャ(やり方)が浸透していて、緊急度を要しない。

 お気づきにあったかもしれませんが、「明らかな間違い」でその通りやるとトラブルが起きるような場面というのは、その設備やシステムを導入した初期に起きがちです。一方、時間が過ぎるごとに少しずつ修正されたような運用方法というのは、既に関与者(現場で動かす人々)における学習プロセスを経ているので、緊急度が低くなりがちです。

 つまり、「致命的でない」×「緊急度が低い」というパターン。

「致命的」×「緊急度が高い」という業務はすぐにでもやるでしょうが、マニュアルというのは初期を除いて、どうしても「致命的でない」×「緊急度が低い」となりがちです。

 マニュアルというのは、それだけアップデートされにくい構造にあるのです。

 アップデートされないマニュアルがそのままになると、どうなるでしょうか?

 「新入り」(新入社員や異動してきた人)のレベルアップに時間がかかるという状態になります。

 そして、そのレベルアップにたいして時間がかかるというのも、許容されてしまいやすいのです。

 何故か。

 それはノウハウを築き上げた人々も時間をかけてやってきましたし、そのノウハウには言語化されにくい(というか、言語化していない)ので、説明も面倒というのがあります。

 そして、時にあるのが「簡単に分かるわけがない」というものであったり、「簡単に分かるのは癪に障る」という、絶対に誰も言わないけども心の底で思っている事象(笑)

 というのも、簡単に自分たちのレベルに来られてしまうと、今まで時間を掛けて築き上げてきた人々からすると、正直気持ちいいものではない。まるでショートカットされたように感じてしまうんですよね。

 マニュアルをアップデートするインセンティブが働きにくいんですね。

 こういう事象に当たったことありません?

 経験者が若い社員にたいして言う「そんな簡単なもんじゃない」という発言。

 経験者は若い社員が簡単に答えにいきつくことにたいして、不安を感じるわけです。

経験者は色々な経験をしているわけですが、若い人はその経験が少ないわけで、答えが一緒でもプロセスが不足しているので、「そう簡単じゃない」と伝えているわけです。

 経験者には一理あるわけですが、若い人にとっては「なんのこっちゃ」でしょうね。

 ここで気を付けておきたいのは、「学習のために必要なプロセス」と「業務として経験すべきプロセス」は異なるのだけども、それが混在して語られることも多いということ。いつの間にか「経験しないとダメ」になっていないか?ということです。

 厳しい言い方かもしれませんが、常に誰もが同じ経験を経て一人前になる必要がある業務というのは、全然進化していないのと同じなのです。つまり、同じ場所にみんなでいるような状態になっている可能性がある。

昔は、クルマを起動させるときは点火タイミングを合わせ、給気バルブを自分で開け、ピストンの位置を自分で調整して、クランクを回していました。

でも、今は「エンジンの構造を分からずに、クランクを自分で回さないとエンジンを点火してはならない」なんて馬鹿げた話って分かりますよね。
意外と、馬鹿げた話を会社の中でやってしまっていることがあるんですね。

 進化というのは、経験しないとできなかったことを、可能な限り少ない経験で前に進め、早く次のレベルアップに時間を使うことそのものです。しかし、なかなかそれが進まない構造があるわけです。

 いつの間にか「俺たちはここに来るまで苦労した、だからお前達も苦労しなくてはならない」という状態になってしまうのです。

 その構造を理解して、どんどん標準化、マニュアル化、システム化して次の世代がもっと楽に前に進めるようにするのが、現役の世代の役割なのです。

 それは社会全体と同じなのかもしれません。

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