テクノロジー

効率的な仕組みも普及すると非効率になる怪

 今回は「効率的な仕組みも、普及してくると何故か非効率になる」というお話しです。

 2000年代にEUCという言葉が流行ったのをご存じでしょうか?

 EUC: End User Computing です。

 これは、今までデータ分析などを行うにしても、情報システム部門に一々お願いをしなくてはいけなかったものを、エンドユーザー側でできるようにしましょう、という考え方です。

 例えば、今は多くの人が知っているcsv形式。データを情報システムからダウンロードして、Excelなどで編集できるようにするためのテキスト形式です。

 これによって、エンドユーザーがデータを抽出して、自由に分析ができるようになりました。

今までは情報システム部門にお伺いをたてなくてはいけませんでしたし、お伺いたてるためには色々と面倒な承認プロセスを経る必要がありましたからずいぶんと楽になりました。

 ところがです。

 このEUCが発展すると、非効率な状態になってしまうケースがあったのです。

 「自由にいつでも分析できる」というのは、やり方さえ覚えておけばすぐに誰でもできますから、みんな気軽にダウンロードしてExcelで分析しはじめるんですね。

 Excelだと色んなグラフを書くことができますから、それなりに綺麗な資料もできあがる。上司も満足する。作った人もドヤ顔できる(笑)みんなハッピーです。

 では、そのグラフ資料や元ファイルはどこに保存されるでしょうか?

 ええ、紙に出力されたものと、元ファイルは個人のPCの中です。

 個別にそれぞれがダウンロード→分析などをするので、数は増える一方。

 気付いたら同じような分析を何人もしていたりするんですね。

 しかも、分析というのは元データをそのまますぐに使えればいいのですが、実際はデータクレンジングなど、形式を整えたりする作業が必要になり、なぜか「みんなで同じことをあちこちでやっている」という、本来効率性を求めているはずが非効率を生み出すパラドックスになってしまうのです。

 それには、この「楽にできる」という原理を探ってみると分かりやすいかもしれません。

 EUCが「楽になる」というのは色んな意味がありますが、大雑把にいって「作業に入る前を楽にする」「作業自体を楽にする」の2つあります。承認プロセスを経なくても「自由にできる」というのが前者。後者は情報システムやExcelなどの機能に相当します。

 自由に出来るというは、いちいち他人(または他の部署)との調整作業をしなくてもいいわけですから、調整作業によって行われていた風景共有(お互い何をやっているかが分かる)がなくなります。それ故、誰が何をやっているか分からなくなる構造に陥りやすいのです。

 よくシニアな人が「最近、みんなそれぞれPCに向かっていて、部下が何をやっているか分からない」というのは、この構造と同根です。

 それぞれが「自由に、楽に出来る」というのは、そのまま放置しておくと、いつの間にか非効率な状態が生み出されてしまうのです。

 ここで、重要になってくる考え方が「標準化」という営みです。

誰もが同じことをそれぞれの場所でやるのは、非効率ですから同じファイルを使ったり、情報システムに実装してしまうような営みで個別化、分散化を防ごうとしているのです。

 ファイルの分散化、個別化が生まれてしまわないように、クラウド上での共同作業ができるような、Officeオンラインであったり、Googleスプレッドシートのようなツールが生まれてきているのは、このような背景もあるのかもしれませんね。

 何となく感じたかもしれませんが、結局は集中化しすぎて、何でも標準の仕組みだけで動くと、変えるのが大変で動きが遅くなる一方、分散化しすぎると同じことをみんながやってしまうので、非効率になってまた動きが遅くなる。

結局は集中と分散のバランスでしかなくて、そのバランスを常にとり続けておかないといけないのかもしれません。

 歴史的にITの仕組みも「集中→分散」をひたすら繰り返しています。そう考えると、「今の仕組みがずっといい」というのはあり得ないことが分かると思います。

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