テクノロジー

ITによる高度化は実は「働き方改革」「コスト削減」対策なのではない

 先日、とあるコンサルの方とお話をしていて「職人が本当にいない」という話になりました。

 人口減少の話とも繋がっていくのですが、出生率の低下によって人口がジワジワと減っているのですが、世の中の仕組みは、人口ピラミッドが二等辺三角形に近い状態を前提に未だに動いています。

 一番分かりやすいのは、健康保険であったり、年金であったり。

 これは市民生活に大きな影響を及ぼすので、なかなか抜本的に変えることができないというのもあるかもしれません。

 もう、政治家が命をかけてやらないといけないけども、同時に「国の将来と今の生活」の変革のジレンマに陥ってしまいます。

 実はこれは会社組織においても、二等辺三角形を前提に動いているケースもあったりします。

 いわゆる「年功序列」で経験を積むことでスキルが上がっていくという前提の下、様々な人事制度が作られてきましたが(職能等級制度に代表されるようなもの)、最近は職務等級制度などで色々と変わっています。

 しかし、意外と変わっていないのが、「技術伝承」であったり「仕事の伝承」と「役職」

 例えば、役職者なのに部下がいない。何年も後輩が入ってこないので、伝承のしようが無い。

 そもそも「後輩に伝える」というのは、常に後から若い人が入ってくるという前提条件で動いているんですよね。

役割も曖昧な中でやっているが故に、引継もじっくりとやることを前提でやっていることも多いです。

 有期契約の社員が多く、業務定義(Job Descripition)が明確で契約で全てが成立しているような国だと、マニュアル化してしまい、引継ロスがあることを前提に物事が動いているのであればいいのかもしれませんが、日本の場合はまだまだそういう割り切りはできていないですね。

 となると、引継ができないというのは、どんどん不味い状況になっていっているわけです。

 だったら、マニュアル化すればいいじゃないかと思うかもしれませんが、そもそも暗黙知の世界でずっと実現していることを、いきなりマニュアル化するというのは、至難の業ですし。そもそもマニュアル化するほどの人的余裕すらない。いきなり外注してできるような代物でもなかったりします。

 もうデッドロックに入ってしまいます。

 給料を上げれば来るのではないか?という話もありますが、それでできるならとっくにやっているでしょうけども、

長い不況を経て多くの企業では、社員を減らすことが難しい企業は、ワークシェアリング的なアプローチで乗り切ってきました。そして、全体の人件費が上がりにくいような仕組みを入れてきました。今度はその制度が、給料を簡単に上げることができない仕組みにもなってしまって、これまたデッドロックに入ります。

 特に上場している企業は人件費率が上がった途端に株価が下落してしまい、株価を梃子に様々なファイナンスを行っている企業にとっては中々人件費を上げること手段は取りにくい。ある有名な遊園地を運営している会社の株価もいわゆる非正規社員へのボーナスを付与する施策を入れた途端に、業績が上がっているにもかかわらず株価が下がるという現象まで起きているくらいです。

 人事制度内において仮に給与を上げたとしても、下げることはそう簡単ではありません。

来年にはオリンピックがやってきます。オリンピックの後には景気が下がるというジンクスがあり、それに警戒する企業が簡単に上げることはおそらくないでしょう。

 仮に人事制度を変えたとしても、それで利益率が向上するという約束もできないですし、これまた人事制度を変えるというのは相当なパワーがいります。(会社側が一方的に変えるというのは、日本の制度上できません)

 となると、職人のような大変な仕事で給料も上がらない、そこに誰が一体希望してくるのでしょうか?

 しかも、やるべきことがなくなるわけでもない。

 外国人を入れろという話もありますが、「外国人が来る」というのは「日本でもらう給料がもの凄く高い」とか「日本で進んだ技術を学ぶことができる」という前提条件に基づきます。

 その前提条件すらいつまで継続するか分からないのです。

 先日行ってきた東南アジアのある国の給与水準は、10年前だと1:10位の違いでしたが、今では1:4くらいまで縮まったとのこと。

 つまり、相対的に日本の力が給与レベルで行くと下がったことになります。

 そして、その国ではまだまだ人件費が上がり続けています。

 もうどうにもならなくて人件費を上げたとしましょう。おそらくそれまでには時間がかかるかもしれません。そして、その時間がかかる頃には、さらに人口は減り、今働いている人はどんどん年を取って行っているのです。

 ここまで読んで頂いて、ちょっと暗澹たる気持ちになったかもしれません。

 それを解決するには、腹を括って仕事のやり方を徹底的に変え、ITの力を借りるしかないのです。これが我々が言う高度化です。高度化というのは「働き方改革」とか「コスト削減」の問題なのではなく、そもそも企業の業務が成立し得ないリスクを回避するための大きなテーマでもあると考えています。

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